自然素材が生んだ日本の逸品、かごバッグの魅力と主要産地

工芸

自然素材を使ったかごバッグが最近、大変な人気を博しています。その独特の質感と一つ一つ異なるデザインが、かごバッグの大きな魅力の一つとなっています。

この記事では、日本製のかごバッグが持つ特別な魅力にスポットライトを当ててご紹介します。

豊岡杞柳細工について

伝統ある工芸品であり、製造の中心地である兵庫県豊岡市の「豊岡杞柳細工」に焦点を当てます。現在も続く洗練された製品製造の魅力を探ります。

豊岡杞柳細工の成り立ち

豊岡市は鞄製造で有名で、現在でも100社以上のメーカーがこの地に存在しています。「豊岡杞柳細工」に携わる職人は約20人で、この地域特有のコリヤナギを使っています。コリヤナギは円山川沿いで収穫され、工芸の発展に貢献してきました。

「豊岡杞柳細工」は、素材の天然の特性から虫害に強く、長く使うことができます。多様な編み方により、さまざまな製品が作られています。

奥会津編み組細工について

福島県大沼郡三島町で製作される「奥会津編み組細工」は、その自然からインスピレーションを受けた魅力に迫ります。

この工芸品は18世紀から製作が始まったとされていますが、最近の発掘で約2400年前の作品が見つかり、古代から技術が受け継がれていることがわかりました。

冬が長く孤立しやすいこの地域では、その期間を利用して「奥会津編み組細工」の製作が盛んに行われました。現在、約1700人が住むこの地域で、170人がこの伝統工芸に関わっています。

ふるさと会津工人まつり

毎年6月、三島町で開催される「ふるさと会津工人まつり」は、奥会津編み組細工の展示や販売を目的としたイベントです。年々規模が拡大しており、2日間で約2万人が訪れ、約1000点の作品が販売される人気のお祭りです。

このイベントの最大の魅力は、通常は入手困難な「奥会津編み組細工」を直接購入できる唯一の機会であることです。これらの作品は普段は三島町生活工芸館でのみ販売されています。

製作過程では、蔓性植物を使い、まっすぐに伸ばすことが必須です。現代ではこの工程にプレス機が用いられ、編み込み後は軽く火であぶって仕上げられます。

奥会津編み組細工の特徴

「奥会津編み組細工」はヒロロ細工、山ブドウ細工、マタタビ細工の3つに大別されます。特に山ブドウ細工は注目されており、その樹皮は短期間でしか収穫できず、一部の作品は数十万円もの価値があります。

あけび蔓細工

手触りが良く、耐久性に優れた「あけび蔓細工」は、全て手作業で仕上げられ、厳しい冬を乗り越える地域の知恵と温かみが込められた伝統工芸品です。

あけび蔓細工の主な生産地

あけび蔓細工の主要な生産地には、津軽地方の青森県、秋田県美郷町、山形県の月山、長野県の野沢温泉村があります。これらの雪国では、冬の間に手作りの工芸品が製作されてきました。当初は日常生活の道具として利用されていましたが、その後美しい造形で民芸品としての需要が高まりました。

しかし、合成素材の普及により、これらの工芸品の需要は減少し、伝統技術を持つ職人は現在では貴重な存在となっています。

あけび蔓の特性

あけびは、山間部でよく見られる植物で、秋には特徴的な紫色の果実を実らせます。細工物に使われるあけび蔓は、直線的に長く伸び、葉が三つつくミツバアケビの種類が特に好まれます。春から夏にかけて成長した蔓は、その後の厳しい環境に耐え、強靭でありながら柔軟な質感を持つようになります。収穫は、9月から11月の初雪が降る前に行われます。

採集後の加工過程

採集されたあけび蔓がどのように工芸品へと変わるのか、加工過程を紹介します。

最初に、蔓を長期間乾燥させます。工房によっては3年以上の乾燥期間を設けることもあります。この乾燥は、製品がカビるリスクを減らすために重要です。
次に、色や太さに応じて蔓を選別します。この際、節を取り除き、表面を滑らかにする作業も行います。
その後、水や熱湯を使って蔓を柔らかくします。この工程では、温泉水や清流を使用することもあり、数日間水に浸します。
柔らかくなった蔓で編み始めます。例えば、カゴを作る場合は木型を使って底から始め、徐々に上へ作業を進め、最後に持ち手を取り付けて端を整えて仕上げます。しかし、蔓の特性に応じて縦糸または横糸を選び、手触りを良くするための編み方には、高度な技術が必要です。

多彩な編み技術で作られる細工品の世界

様々な編み方を駆使して多種多様な細工品が作り出されます。

●ざる編み

基本的なかご作りの編み方で、縦の蔓を等間隔に配置し、横の蔓を密に編み込む技法です。この方法で作られるものは、密な編み目によって高い強度を誇ります。「ゴザ目編み」とも呼ばれます。

●こだし編み

縦と横の蔓を等間隔に編み込むことで、内部が透けて見える美しい効果を生み出す技法です。この繊細な作業は「透かし編み」とも称され、横幅の調整や細やかな修正が必要です。

●網代編み

平たい蔓や細い蔓を数本組み合わせて、隙間なく縦横に交互に編み込む技法です。編み目を斜めにずらしながら進めることで、横方向の編み目が斜めに進んでいきます。特に忍耐が要求される技術です。

これらの技法以外にも、波編み、みだれ編み、菊底編みなど30種類以上の編み方があり、作品によっては複数の技法が組み合わせて使用されることもあります。職人の巧みな技術と創造力により、手提げかご、花かご、果物かご、バスケット、トレー、スリッパ、おもちゃなど、様々なアイテムが生み出されます。

これらの製品は、生産地の工房や地方の道の駅、オンラインショップで購入できます。また、編み方をカスタマイズできるオーダーメイドサービスを提供する店舗もあります。和装だけでなく洋装やモダンなインテリアにもマッチし、人気製品は注文から納品まで1年を待つこともあります。

使えば使うほど美しくなる

使用を重ねることで、「あけび蔓細工」はより滑らかで光沢を増していきます。非常に耐久性が高く、適切な手入れをすれば数十年間使い続けることができ、使うほどに愛着が深まります。世代を超えて受け継がれることもあり、使用を終えた後は自然に還る環境に優しい素材です。

蔓を採集してから製品に仕上げるまでには、危険を伴う重労働が必要で、力の要る作業で職人はしばしば手を痛めます。「あけび蔓細工」は、職人の時間と労力を惜しまずに作られる芸術品です。この伝統的な美しさを守り、次世代に伝えることの大切さを忘れてはなりません。

竹工芸の魅力

竹を使用して作られる様々な工芸品、それが竹工芸です。この分野には、伝統的な籠やざる、食器、茶道具、そして日用品としての熊手や竹箒、さらに竹灯籠や装飾品、古典的な遊び道具としての竹とんぼや水鉄砲などが含まれます。

主に使用される竹の種類はマダケで、用途に応じてさまざまに加工されます。その中には、生のまま使用される青竹、火であぶったり苛性ソーダで煮て油を抜いた白竹、煙で燻して黒くした煤竹、炭化して固まった竹炭、そして伐採後に自然乾燥させた枯竹などがあります。

勝山竹細工

勝山の竹細工技術は、1860年代に確立されたと言われていますが、当初は実用的な品が中心だったため、初期の作品はほとんど残っていません。歴史的な記録から、江戸時代末期には既に勝山で竹細工が行われていたと考えられています。

勝山の竹製品は、その堅牢さと実用性で知られ、穀物の運搬や量り売りに欠かせないアイテムとなってきました。最近では、農具だけでなく花籠やパン籠、果物籠なども作られています。勝山竹細工では、竹の外側の青みがかった部分と内側の黄色い部分を薄く削って使用します。

この方法で作られる竹ひごは、二色を使い分けることで美しい模様を生み出します。青い部分は時間が経つにつれて琥珀色に変化し、その変化も勝山竹細工独特の風合いを醸し出します。

別府竹細工

室町時代から別府地域では、竹を使った工芸品の製作が始まり、行商人向けの籠などが制作・販売されていました。当時、これら製品の取引を支える市場も形成されていたといいます。別府温泉の知名度が上がると、温泉客向けの飯籠やざるなどの日用品も製作されるようになりました。

別府温泉の人気と共に、別府竹細工の土産物としての需要も増加し、地元産業として確固たる地位を築きました。別府竹細工は、四つ目編み、六つ目編み、八つ目編み、網代編み、ござ目編み、松葉編み、菊底編み、輪弧編みなど、200種類以上の編み方を用いる技術を持ちます。

別府竹細工の魅力を発見

JR別府駅からわずか10分の場所にある「別府市竹細工伝統産業会館」では、竹細工の歴史や制作技法、日常生活での使用方法などを学ぶことができます。また、名工の作品や実際の制作に使われる道具の展示も見ることができます。

国内唯一の竹細工専門学校

別府の伝統工芸、竹細工技術を次世代に継承するために、「大分県立竹工芸訓練センター」が設けられています。高校卒業後から39歳までの志望者を対象に、適性検査や学科試験、面接を経て、2年間で竹工芸に関する広範な知識と技術を学びます。授業料は無料で、修了後には竹製品製造業や自分の工房開設など、様々なキャリアが可能になります。この学校は昭和13年の設立以来、国内で唯一の竹工芸専門の訓練機関として、技術の継承に貢献しています。

竹細工文化の継承と普及

経済産業大臣により伝統工芸品に認定された別府竹細工は、その精巧な手仕事で多くの人々を魅了しています。しかし、技術者の減少により伝統が途絶える恐れがあります。繊細な技術で作られた竹細工は、触れると温かみを感じさせる製品を提供します。この美しい伝統を若い世代に伝え、継承していくための努力が必要です。

まとめ

ここまで別府竹細工の魅力、その歴史、そして学びの場所について紹介しました。使い込むほどに愛着が湧く竹細工品は、日常生活に温もりと美しさを加えてくれます。