南部鉄器の使い方、保存・清掃のコツ

工芸

岩手県の盛岡市と奥州市は、伝統ある南部鉄器の生まれ故郷として有名です。

11世紀、奥州市で始まった南部鉄器の製作は、藤原清衝が近江から鋳物職人を呼んでスタートしたのが始まりです。その後、16世紀には盛岡市でも盛岡藩の後押しを受けて製造が始まりました。昭和時代には、これらの地域で作られた製品全体が「南部鉄器」として認知されるようになりました。近年では、鮮やかなカシュー塗料を施した南部鉄器が国外でも注目を集めています。

南部鉄器で沸かすお湯は味が良く、健康にも良いとされ、多くの人々から支持を受けています。お手入れが難しいと思われがちですが、正しい方法で使用し、きちんと手入れをすれば、これらの製品を長く愛用することが可能です。以下では、南部鉄瓶、鉄鍋、急須それぞれのお手入れ方法を紹介します。

南部鉄瓶の基本的な使い方とお手入れ方法

使用する前にやるべきこと

使う前には、8割方まで水を入れて沸かしましょう。最初に沸かした時、水に赤みが見えることがありますが、心配無用です。この作業を透明なお湯が出るまで約3回繰り返してください。

使い始めの時期の留意点

新品の南部鉄瓶を使い始めた最初のうちは、内側に赤い錆びのような斑が見られることがありますが、数日で白い湯垢に変わります。湯垢が鉄瓶の内部を覆うと、お湯の味が良くなります。この状態が南部鉄瓶の最良の状態ですので、湯垢を損なわないよう内部を強くこすらないでください。湯垢が早く形成されるよう、最初の2週間は日々の使用が推奨されます。

使った後の手入れ

南部鉄瓶は鉄製なので、使った後に水分を残すと錆びる原因になります。使った後は、内側外側問わず、水分をしっかりと拭き取って乾かしてください。特に内側は乾燥させることが重要で、蓋を開けて自然に乾かすか、軽く加熱して水分を飛ばしましょう。

錆びた時のメンテナンス方法

長期間使用していると、南部鉄瓶の内部に錆が生じることがあります。これは自然なことであり、通常使用には問題ありませんが、お湯が赤く濁ったらメンテナンスが必要です。表面の軽い錆はお茶の葉を包んだ布で拭き取れます。内部が大きく錆びた場合は、茶殻を入れた布やパックで20分ほど煮て錆を落とします。この時、お湯が黒くなることがありますが、それはお茶のタンニンと鉄が反応しているからで、問題ありません。処理後、お湯が透明になるまで数回沸かせば、再び使えるようになります。

南部鉄鍋の使い始めとお手入れ方法

使用する前にやるべきこと

新しい南部鉄鍋を使う前には、一度水で洗い流し、水気を拭き取った後、薄く油を塗って鍋に馴染ませましょう。鉄鍋独特の匂いが気になる場合は、ネギなどの香りの強い野菜を炒めることで匂いを消すことができます。使用されるカシュー塗料はカシューナッツ由来で、健康に害はありません。

使った後の手入れ

使用後は汚れをしっかり洗い落とし、鍋が暖かいうちに水分をしっかりと除去してください。保管する前には、鍋の表面に薄く油を塗ることで、錆を防ぎ、鍋を長持ちさせることができます。

錆びた時のメンテナンス方法

錆びてしまった場合も、南部鉄瓶と同様にお茶の葉を使った方法で錆を落とせます。この手入れ方法は鉄鍋のメンテナンスにおいても大切で、鍋を長く良い状態で使い続けるために役立ちます。

急須の使い方とお手入れ方法

使用する前にやるべきこと

使い始める前に、急須を温かい水でしっかりと洗い流しましょう。

使った後の手入れ

洗うときは、温水を使って、特に注ぎ口や蓋に残った水分を丁寧に拭き取ることが大切です。

錆びた時のメンテナンス方法

急須は、鉄瓶や鉄鍋に比べて錆びにくいですが、もし錆びてしまったら、似たような方法でメンテナンスを行います。ただし、お湯が赤く濁らない限り、使用に問題はありません。

まとめ

使えば使うほどに味わい深くなる南部鉄器は、愛着を持って長く使い続けることができます。日々のお手入れを通じて、「育てる」ことの喜びを感じることができるでしょう。

質の良いものを毎日の生活に取り入れることは、南部鉄器の伝統と美しさを日常に加える素晴らしい方法です。