竹の温もりを感じる手仕事―緻密な技術で創られる竹細工の世界

工芸

竹細工は、竹を加工して様々な製品を作り出す伝統的な技術です。竹を使った籠、ざる、箸、茶道具、熊手、竹ぼうき、そして照明や装飾品、竹とんぼや水鉄砲といった昔懐かしい玩具に至るまで、生活の多方面で用いられています。

竹細工には主にマダケが使われ、その加工法には様々な種類があります:

・伐採したままの青竹
・火であぶったり、苛性ソーダで煮て油を抜いた晒し竹
・囲炉裏や竈で燻された煤竹
・炭化させて作った炭化竹
・切り倒してから自然乾燥させた竹

これらの加工法は、作成する竹細工の用途に応じて選ばれます。

勝山竹細工の伝統

勝山での竹細工技術は、1860年代に確立されましたが、そのほとんどが実用品であったため、現存する作品は少ないです。史料によれば、江戸時代末期には既に勝山の竹細工が流通していたことが伺えます。

勝山の竹製品は、その頑強さと使い勝手の良さから、穀物を運ぶ際や量り売りに使われ、農家にとって欠かせない存在でした。近年は、農具だけでなく花籠やパン籠、盛り籠なども手掛けられています。竹の外側の青い部分と内側の黄色い部分を細く剥いて使う勝山の竹細工は、それによって生まれる美しい模様が特徴です。時間が経つと青い部分が飴色に変化し、更なる風合いを醸し出します。

別府の竹細工の世界

室町時代以来、別府では竹を用いた工芸品の作成が一大産業となっています。当初は行商人のための籠作りから始まり、その後市場が形成され、様々な竹製品の取引が盛んになりました。江戸時代になると、別府温泉の人気が高まり、温泉を訪れる人々のための飯籠やざるなど、竹製品への需要が一層増加しました。

別府温泉の盛況とともに、竹細工は地域の重要な産業へと成長しました。別府で作られる竹細工は、観光客にも愛される土産物となり、地域経済に貢献しています。別府竹細工には、「四つ目編み」「六つ目編み」「八つ目編み」「網代編み」「ござ目編み」「松葉編み」「菊底編み」「輪弧編み」といった、多彩な編み技法が存在し、これらを組み合わせることで200種類以上の独特な編み模様を作り出せるとされています。

別府竹細工を体験する場

JR別府駅から車で約10分の場所に位置する「別府市竹細工伝統産業会館」では、竹細工の豊かな歴史や技術、生活との結びつきを詳しく知ることができる展示が常設されています。訪れる人々は、職人の技が光る作品や、竹細工に使用される道具を間近に見ることが可能です。また、実際に手を動かして学ぶことができるワークショップも充実しています。

♦竹鈴

明るい色の竹ひご5本を使って竹鈴を作ります。
対象:小中学生以上
参加費:400円
所要時間:約30分

♦四海波(しかいなみ)

 竹ひごを丸く編んで小物入れを作ります。
対象:中学生以上
参加費:1,000円
所要時間:約60分

これらの活動は事前予約が必要で、参加希望日の1週間前までに予約する必要があります。

日本で唯一、竹細工の職人を育成する機関

「大分県立竹工芸訓練センター」は、竹細工の技術と伝統を将来にわたって引き継ぐことを目的とした専門教育機関です。別府の伝統工芸に興味がある人々が学べるこの学校は、高卒後から39歳までの者を対象に、適性試験や面接を経て学生を選抜しています。学生は教材や実習衣などの費用は自分で負担しますが(約5万円)、授業料はかかりません。

学習内容は、竹材や刃物に関する基本知識から始まり、工芸の歴史、デザインの原理、具体的な工作技術、染色や塗装の方法、新しい商品を開発するための手法、マーケティングや企業経営に至るまで、多岐にわたります。

2年間の教育を終えた卒業生は、竹製品を製造する企業への就職や、自分の工房を開くことが可能になります。昭和13年に設立されたこの学校は、日本で唯一の竹工芸専門の訓練校として、竹細工の技術の保持と伝達に貢献しています。

別府と勝山、二大竹細工の魅力を未来へ

経済産業省によって伝統工芸品と認定されている別府竹細工と勝山竹細工。これらは、竹ひごを巧みに編み込む繊細な技術で知られ、その美しさで多くの人々を魅了しています。

しかし、職人が年々減少している現状は、これらの伝統工芸の継承にとって大きな課題です。竹細工には高い技術力が求められ、作品からは温かみと懐かしさが感じられます。これらの貴重な工芸が広く知られ、特に若い世代が職人の道を歩む機会が増えることが望まれています。