京からかみ:京都が誇る伝統工芸の魅力とは?

工芸

「京からかみ」をご存知ですか?日本古来の伝統工芸品で、私たちの生活にも身近に存在しています。
特に、襖や障子に用いられる紙として親しまれていますが、その裏には深い歴史と技術があります。
今回は、そんな京からかみの世界を少しだけ紐解いてみましょう。

「京からかみ」とは?

京からかみは、繊細な模様が施された木版に特別に作られた唐紙を押し付け、模様を刻印する技法で作られる伝統的な紙です。
簡単に言うと、学校で体験する版画のようなものですが、その製作には気温や湿度の影響を受けやすい手作りの絵具が用いられ、非常に高度な技術が求められます。

京からかみの歴史

紙がまだ珍しかった時代、日本は中国との間で貿易を行い、その中で唐紙が輸入され、非常に価値のあるものとして扱われました。
この唐紙は、高価で貴族のみが使用できる特権的なものでした。

遣唐使が廃止されると、唐紙の輸入は止まり、日本国内で製造された和紙が唐紙の役割を担うようになりました。
時が経つにつれ、和歌や詩を楽しむ文化の発展とともに、唐紙にも様々な模様が施されるようになり、「紋唐紙」と呼ばれるようになりました。
これが現在の襖や障子に使われる紙の起源です。

江戸時代、徳川家康が京都に設立した「芸術村」では、様々な伝統工芸品が生まれました。
歌舞伎の人気とともに、唐紙のデザインも進化し、かつて特定の階級に限られていた使用が、襖や障子といったより広い用途へと拡がり、多くの人々に愛されるようになりました。
これが、京からかみが長い歴史の中で培われ、今に伝えられる伝統工芸品としての価値です。

京からかみの作り方を紹介します

京都の伝統工芸である京からかみの製作過程について、詳しく見ていきましょう。

① 木版彫り

京からかみの制作には、熟練の職人による手彫りの木版が使われます。
この作業に適した柔らかさを持つ木材が選ばれ、多くの場合、桜の木が用いられます。
歴史を感じさせる木版もありますが、天然の木を使用しているため、時が経つにつれて損傷が生じ、新しく彫り直す必要が出てくることがあります。

② 唐紙を作るための材料

接着材の準備

絵具の固定には「布海苔」という、海藻から作られる自然の接着剤が使われます。
この布海苔は、京からかみの色や柄を定着させるのに不可欠な素材です。

雲母の加工

地学で学ぶ変成岩の一種である雲母は、その柔らかさから薄く剥がれやすい特徴を持ちます。
この雲母を粉末にすることで、京からかみに独特の輝きを与える材料として活用されます。

胡粉の利用

胡粉は、ハマグリやカキの貝殻を細かく砕いた粉末で、顔料や岩絵具の一部として使われます。
この自然由来の素材が、京からかみの色彩をより美しく見せる役割を果たします。

特別なふるいの使用

絵具を木版に均一に塗布する際には、特別に作られたふるいが用いられます。
これは、料理に使うものとは異なり、杉の木で作った円形の枠にガーゼを張ったものです。
これにより、絵具がきれいに木版に適用されます。

和紙への転写

木版に塗られた絵具は最終的に和紙に移され、美しい模様が生まれます。
京からかみには、鳥の子紙や黒谷和紙など、様々な種類の和紙が使われ、それぞれ独特の質感を出しています。

③京からかみの制作過程を詳しく

まず始めに、布海苔を用意します。これは前日の夜から水に浸し、翌日ゆっくりと加熱しながら注意深く煮込んで作ります。

その後、炊き上がった布海苔をさらに精製するため、裏漉し作業を行います。この作業を経ると、布海苔は使える状態、つまりはちみつのような粘度になります。

次に、絵具を作ります。裏漉しした布海苔に、顔料、雲母、胡粉を加え、慎重に混ぜ合わせます。この際、その日の気象条件に応じて微調整を行う必要があり、長年の経験が求められる工程です。

絵具を特別に用意されたガーゼで覆われたふるいに移し、木版に均一に適用する準備をします。この時、絵具の水分量の調整が重要であり、木版の湿度を適切に保つ必要があります。これは、季節や湿度によって変わるため、高度な技術が必要です。

ふるいから木版への絵具の転写は、木版に絵具が均等になるように、何度もふるいを振ります。

そして、絵具を施した木版を使って和紙に模様を転写します。特に大きな作品を作る場合、同一の木版を複数回使用し、非常に精密な作業が求められます。例えば、襖に模様を施す際は、木版の位置を12回変えながら転写を行う必要があります。これは集中力を要する作業です。

京からかみの模様は、手作業で摺り上げられます。通常はバレンを使って摺りますが、からかみの場合は、絵具の塗布にわざと少しムラを残し、立体感を出します。基本的には2度摺りを行い、1度目に下地をしっかり摺り、2度目にはより軽く摺ります。襖を作る際には、24回も摺り重ねることが必要です。

最後に、摺り上げた京からかみを竿に掛けたり、平らな場所に置いて乾燥させます。一つ一つ職人の手によって丁寧に作られたからかみは、それぞれが独自の風合いを持っています。この時間と労力をかけた工程は、職人にとっても大きな喜びとなっています。

京からかみを体験しよう

京からかみ作りの緻密さや工程の大変さを理解していただけたかと思います。
そんな京からかみを実際に作ってみたいと思う方にお勧めの場所が、【WABUNKA(和文化)】というウェブサイトです。

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興味がある方は、是非訪れてみてください。

まとめ

今回は、京からかみの魅力やその歴史についてご紹介しました。
これらの情報が、皆さんの知識を深める助けとなれば幸いです。