石川県、特に加賀地方は、豊かな歴史と文化の中から様々な伝統工芸品が生まれてきました。
ここでは、加賀が誇る「百万石文化」に根差した、多彩な工芸品を集めてご紹介します。
石川県に伝わる伝統工芸品
石川県で育まれ、国にも認定された伝統的な工芸品を見ていきましょう。
牛首紬
白山市を中心に生産される牛首紬は、石川県を象徴する伝統工芸品の一つです。この絹織物は、玉繭を用いた座織り技法で糸を引き出して作られ、特有の美しさを持っています。
源氏の落人が牛首村(現在の白山市)に逃れ、地元の人々に機織りの技術を伝えたことから始まりました。「釘抜紬」という名前も持ち、文字通り釘に引っかかっても抜けるほど強いことからその名がつけられました。この強さと、独特の節のある光沢が魅力です。
1988年には国の伝統的工芸品として指定を受けました。
加賀友禅
加賀友禅は金沢市を発祥地とし、石川県特有の伝統工芸品です。日本三大友禅の一つに数えられ、加賀五彩と呼ばれる独特の色使いで自然や草花をリアルに描き出します。
1975年に国の伝統的工芸品に認定された加賀友禅は、15世紀の梅染から始まり、宮崎友禅斎が江戸時代に加賀藩の御用紺屋太郎田屋で技術を改良し、現在の加賀友禅の基礎を築きました。
加賀繍
石川県の金沢市、白山市、能美市を中心に製造される加賀繍は、伝統的な工芸品です。
金や銀の糸を使って手作業で施されるこの繊細な刺繍は、その製作過程全てが手仕事によるもので、ミシンでは出来ない細かいディテールと独自の質感を持っています。
1991年には、伝統的工芸品として経済産業大臣に指定されました。
[起源]
14世紀に京都から加賀へ伝わった手刺繍技術が起源で、仏教の布教と共に僧侶の衣装などを通じてこの技術が伝えられました。
九谷焼
金沢市、小松市、加賀市、能美市で作られる九谷焼は、鮮やかな絵付けが特徴の磁器で、幅広い人気を集めています。
[起源]
九谷焼の歴史は17世紀までさかのぼり、加賀藩の分家である大聖寺藩の藩主、前田利治が肥前有田での陶磁器製造技術を学ぶため、錬金術師の後藤才次郎を派遣しました。
才次郎の帰郷後に九谷で窯を築き、製造を開始したのが始まりといわれています。
当初の窯が閉鎖されてから約80年後に復興し、その後も職人たちの努力により受け継がれてきました。
九谷焼は、緑、黄、赤、紫、青などの和の色彩で描かれます。
輪島塗
輪島市で主に製造される輪島塗は、日本を代表する漆器の一つで、特にその耐久性に優れています。
布を漆で固定して補強する「布着せ」技術や、地の粉を混ぜた漆で下地を作る工程が特徴です。
[起源]
輪島塗は古くから地域で使用されていた漆を利用しており、現在の製法は17世紀に確立されたといわれています。
輪島が港として活躍していたことから、全国に輸出され、早くからその名を馳せていました。
山中漆器
石川県山中地区で生産される山中漆器は、挽き物の木地を用いた伝統工芸品です。
この地方は木地製作で有名で、山中漆器の魅力は、木地の自然な美しさを生かした装飾技術にあります。
技法には「筋挽き」「千筋」「荒筋」「毛筋」「糸目」「トビ筋」「稲穂挽き」などがあり、それぞれが木地に繊細な装飾を施します。
[起源]
16世紀に越前地方から移り住んだ木地職人によって始められたとされる山中塗。
ロクロを用いた木地作りがこの地で根付きました。
金沢漆器
金沢市、野々市市、河北郡内灘町で作られる金沢漆器は、加賀藩主・前田利常によって17世紀に始められたとされる石川県の伝統工芸品です。
彼は高台寺蒔絵の技術者、五十嵐道甫を招き、加賀蒔絵と呼ばれる独特の「肉合研出蒔絵」技法を伝えました。
この技法は金粉を盛り上げた文様に蒔いて研ぎ出し、金沢の上品で豪華な文化を象徴しています。
金沢仏壇
17世紀から製造されている金沢仏壇は、浄土真宗の広まりと共に金沢市で発展した伝統工芸品です。
金箔や蒔絵など、金沢特有の装飾技術が施され、「金沢の工芸の総合芸術」と称されるほどの豪華さと繊細さを持ちます。
七尾仏壇
石川県七尾市や鹿児郡中能登町で作られる七尾仏壇は、釘を使わない「ほぞ組み」による堅牢な造りが特徴です。
この手法により、世代を超えて使用される耐久性を持ちます。
金沢箔
金沢箔は、日本の金箔生産の約98%を担う金沢市で作られており、その極薄の美しさは国内外で高く評価されています。
この金箔の製造技術は16世紀にまで遡り、1977年には伝統的工芸品に指定されました。
まとめ
石川県の伝統工芸品は、地域の文化や歴史を今に伝える貴重な財産です。これらの工芸品は、その美しさや独特の技法で、多くの人々に愛され続けています。